※2013年のインタビューになります
本作の制作を担当した各スタッフへのインタビューをご紹介します。第1回は、シリーズ構成、
脚本を担当している小林靖子さん。アニメーション、実写を問わず、数多くの作品を手掛けて
いる小林さんに、本作への意気込み、目指したところをお伺いしました。
─ 今回の仕事を聞いてどんな印象を受けましたか?
小林靖子(以下、小林) 実は今回、仕事として受ける前に原作コミックを読んでいました。ですので、仕事として聞いたときは「そうか、アニメ化されるのか」が最初の印象でした(笑)。
だいたい仕事として受けてから原作を読むことが多いので、仕事抜きで一読者として読んだときの感想を大切にできることが今回大きかった部分でしょうか。視聴者が(このアニメに)何を期待されているのか、どういうところに面白さを感じたのかは、おそらく一緒なんじゃないかな、と思っているので。
─ ちなみに小林さんは原作のどんなところが面白いと感じましたか?
小林 まず「死」への緊張感ですね。フィクションのなかでの「死」は、時にありふれてしまいがちですが、この『進撃の巨人』での「死」はすごく迫ってくる怖さがありました。
ドキュメンタリーでもないのに、それに近いリアルな「死」を感じる。
それは、(巨人に)喰われるという、すごくわかりやすいかたちでの唐突な「死」のためかもしれません。しかも、その巨人の見た目が怪獣でもジェイソンのような殺人鬼でもなく、一見ちょっと間抜けな印象を受けるような造形じゃないですか? 大きさもイヤな大きさというか……。
食べられる場面も鋭い牙で噛み切られる、ガブリと噛みつかれるわけではなく、本当に人間が米を食べるように咀嚼する。
“食べられてしまう”という恐怖が、いままでに感じたことのないイヤな印象を受けました。うわーっという。
このうわーっていう感じは、同時に面白さでもあるわけですが、1巻の終わりで主人公が巨人に喰われる場面も「ええっ! ? 」ってなりましたしね……。
─ 原作コミックが2011年に第35回講談社漫画賞少年部門の受賞をはじめ「このマンガがすごい!」に2年連続入賞するなど有名な作品です。映像化するにあたって小林さんが意識した部分はありますか?
小林 2クールのほかの作品に比べると原作の分量が足りない分、どうしてもプラスアルファが必要になります。それはシーンであったりセリフだったりするわけですが、その際に下手に掘り下げるというか、ドラマチックに盛り上げることをしない。別の言い方にすると、人の死をドラマチックに描かない、と言えるのかもしれませんが……。
─ それはどういうことでしょうか?
小林 たとえば死に行くキャラクターに「あとを頼む」と言わせたり、劇的なドラマを加えて死の場面を引き伸ばしたりはせず、何の前触れもない「死」、ふいに「死」が訪れる。それが『進撃の巨人』の怖さだと思うんですね。
─ 本作のような原作を映像化するときと、完全なオリジナル作品を手掛けるときとで何か違いはありますか?
小林 それぞれに難しさがあるので、原作ものだから作りやすい、オリジナルだから難しいということはありません。
今回は、2週間に一度、原作者の諫山(創)先生に本打ち(*)に出席していただいているので、すごく助かっています。
こちらで膨らませて原作と異なる箇所は指摘してくださいますし、逆に原作では描かれていない部分で「もっとこうしたかった」というのを率直に教えていただけるので。そういったところを監督以下、関係スタッフと詰めています。原作の時系列の並べ替えやアニメオリジナルとして加えた部分が、まるでもともと原作にあったかのような錯覚を抱いてもらえるように。パズルのピースを組み合わせるような感覚です。
─ 本作で小林さんにとってお気に入りのキャラク
ターは?
小林 仕事として入ってしまうとあまりそういう観点では考えられないのですが、原作を読んでいるときの感覚でいえばミカサですね。すごく素敵なキャラクターだと思います。
─ 理由は?
小林 まず一人だけ東洋人の血を引いていて、ちょっとミステリアスな雰囲気があるところや、ものすごく強いのに一途で女の子らしいところなど。あくまで個人的にですが……。
なんとなくですが、そういう女性キャラが好きなのかもしれません。しかも口の周りを隠されてしまうと、いろいろとこちらで想像する部分が増えてとてもいいですね(笑)。
─ 荒木(哲郎)監督とは『DEATH NOTE』以来の仕事となります。
小林 『DEATH NOTE』のときからそうでしたが、荒木監督は自分がやりたいと思っていることをきちんと伝えてくださる方なので、仕事がしやすい方です。
─ タイプでいうとどんな方ですか?
小林 本打ちでは、構成内容をすごく冷静に分析していて、自分で勝手に盛り上がってしまわない。「このシーンは絶対こうだから、こうでないとダメ」というタイプではありません。
また、原作の要素をすべて入れないといけない、とガチガチになるわけではなく、常に視聴者目線で捉えていて、バランス感覚に優れていると思います。話しやすい方です。
─ 完成した映像をご覧になって、小林さんが荒木監督らしさを感じる部分はありますか?
小林 そこまでいえるほど荒木監督の作品を観ていないので、あくまで個人的な感想ですが『DEATH NOTE』のときから、画面の見せ方が面白いな、と思っていました。オープニングの最後の方で、あんなにキャラクターが宙を舞うとは思っていませんでしたし、立体機動のアクションもあんな風に動かすとは想像していませんでした。
『進撃の巨人』だと、どうしても派手なアクションシーンに目がいってしまいがちですが、人間の感情の機微というか、ドラマを大切にされる方です。実写と違ってアニメ―ションだと、声優さんがついているとはいえ、あくまでも絵なので細かな芝居を描くのが難しいと思います。そこを、ちょっとした仕草や表情、会話の間、カットバック、同じポジションのカメラで表情を拾うなど、思いのほかキャラクターが演技をしている。そこがすごいな、と思います。
─ 今回、脚本は最低でも3稿以上、多いものでは9稿と完成稿まで練り上げられています。
小林 脚本陣は私を含め3名で回しています。荒木監督のオーダーに的確に答えてくれたり、直しにもどんどん応じてくださるので、本当に頼もしい限りです。今回私はシリーズ構成ですが、何かこちらからフォローしないといけない場面は少なくて。作品の内容的には難しいところも多々ありますが、仕事そのものは比較的スムーズに進んでいます。
─ 小林さん自身の手ごたえとして何か感じるところはありますか?
小林 ライターって、だいたい作品の反響を知る前に、次の仕事に入ってしまうんです。脚本が自分の手を離れた段階でおしまい、というか。なので、正直手ごたえといったことを感じること自体あまりないのですが、今回は自分の周りで『進撃の巨人』観てるよ、と言われることが多いです。
特に、いつもアニメを観ることのない妹に観てるよ、と言われたのは驚きでした。もしかして、これはすごいことになっているのかも、と思います。
─ 最後に#03以降の見どころを教えてください。
小林 #01、#02ぐらいだと、ようやくエレンが兵士になる決意をしたところで終わってしまうと思います。その意味では、まだまだ巨人の恐怖が勝っていると思います。でも、ここから人類の反撃が始まる予定なので、そこをぜひご覧になっていただきたいです。そうはいっても、よくあるアクションもののような素直な反撃ではないので、どうやってエレンたちが戦っていくのかを楽しんでいただけるとありがたいです。
*本打ち……監督、プロデューサー、脚本陣で行う脚本についての打ち合わせ。