※2013年のインタビューになります
このページでは制作を担当した各スタッフへのインタビューを紹介します。
第3回は、浅野恭司さんとともに、本作を絵の部分で支える総作画監督の門脇 聡さん。
『AIR』『Kanon』『かんなぎ』など、これまで女性キャラクターがメインの作品を
多数手掛けてきた門脇さんが、どちらかといえば男性キャラクターの多い本作に、
どのように取り組んでいるのか、率直なところをお伺いしました。
─ 門脇さんは原作コミックのファンだったと伺っています。
門脇 聡(以下、門脇) 原作コミックの第1~2巻が発売されたあたりで話題になっていたので、興味を持って追いかけていました。アニメ化の話は、2011年『ギルティクラウン』に参加しているときに、中武(哲也)プロデューサーから聞いたのが最初です。原作ファンだったので、「おお、それはすごいな」と思いました。
─ 原作のどんなところに惹かれていたのでしょうか?
門脇 各キャラクターの台詞のチョイスをはじめ、世界観等作品全体として好きでした。気持ちを込めてキャラクターを表現するのは、思っている以上に難しいんです。
たとえ表向きうまい絵でも、気持ちがこもっていないことって結構多いので。その点『進撃の巨人』はキャラクターの心情が、絵を通して痛いほど伝わってくる。原作コミックの持つ魂のこもった絵を、アニメでも表現できたらな、と思いながら制作しています。
─ 門脇さんはこれまでにアニメオリジナル作品以外に、アニメやライトノベル、ゲームを原作にした作品のアニメ化も手掛けられています。何か違いはありますか?
門脇 原作ものの場合、ある一定のガイドラインというか、物語の展開や構成が見えているぶん、背骨がしっかりしているので、途中でブレないというか。キャラクターの表情一つとっても、原作ものの場合は原作を参考に描けるのですが、オリジナルだとキャラ表(*1)しかないので、担当するスタッフごとの個性というか、統一感を出すのが難しいですね。
ただ、今回、僕は原作コミックのファンだったので、ネタバレというか、物語の先の展開を知ってしまったのが残念でした。作品制作に携われてうれしい反面、楽しみが減る悲しみがありました。
このお話をいただいたとき、原作コミックは巨大樹の森で女型の巨人と戦っているところだったのですが、女型の巨人の正体を知ることになってしまって物語の伏線を張るうえでも、先々の展開を知っておくことは重要ですが、荒木(哲郎)監督の机にわかりやすく置かれていて「酷なことするなあ」と思いました(笑)。
─ 荒木監督のお話が出たところで、門脇さんから見た荒木監督はどんな方ですか?
門脇 クールで大人な方です。本作では「作画時七つの掟(*2)」というのを作られていて。
─ 日付を見ると4月22日です。
門脇 #03までのラッシュを観た荒木監督から回ってきたものだったので。制作に入る前からあれば、それに越したことはないのですが、やはり、出来上がった画面を観てみないと判断できない部分ってあると思うんですよね。たとえ制作途中でも、気づいたことがあれば少しずつでも改善して、より進化できた方がいいと思います。
─ このなかでも、特に注意されているのはどの項目でしょうか?
門脇 原作のテイストを画面で再現するにあたっては、掟二の「リンカクだけでも二重線!」は、役立っていると思います。作業的には、すごくたいへんなんですが……。
通常の作品の場合、輪郭線はただ単純に1本引いて終わりなんですが、原作コミックのペンの強弱を表現するにあたって、2本目を引いてその間を塗っているんです。
最初のころは発注している動画会社さんに、説明するのがたいへんでしたが、こちらの意図が伝わってからはだいぶ楽になりました。画面作りの方向性が決まったという意味では#05~#06くらいでしょうか?
止め絵やパッと見の印象では、この作業が一番大切だったのかも、と思っています。
─ 門脇さんはこれまで、美少女キャラクターを描く機会が多かったと思いますが、本作はどちらかといえば男性キャラクターが多めです。
門脇 #02の終盤のミカサは初めて描いたミカサだったので試行錯誤しましたが、とにかく美人に描こうという一念だけで描いていました。ただ、12歳の年齢を考えると艶っぽくしすぎたかな、とは思います。
そうしたら荒木監督から掟四「ミカサはアッサリめに描け! 」と。
ミカサの美人度を増すにはどうやればいいんだろうと思っていたところだったので、「あっさり目に美人度を出さないといけない。どうしようかな?」と四苦八苦しております。
実は、描いていて一番難しいのはクリスタなんです。
萌え系やカワイイ女の子もそうなんですが、かわいく描くのはプレッシャーなんです。男性でもブサイクなキャラクターや巨人の顔を描いている方が気が楽ですね。変顔とか、ムチャもできるので。反対にリヴァイなんかはカッコよく描かなきゃいけないな、というのがあって正直プレッシャーです。
リヴァイへの憧れで髪型を似せているんだけど、クセっ毛で全然決まっていないオルオは、顔も言動もアレですけど、そういう痛いところがカワイイですね。
エレンも、猪突猛進で訓練兵の同期からいろいろと言われてますが、理想論だけを語るキャラクターではないので、すごく好きです。
ライナーは描いていて楽しいですね。美少女を描く仕事が多かったので、こういう方向性のキャラクターは描いていて楽しいです。実は、彼の眉は眉間の太い部分だけで、残りは段差だったりもするので(笑)。
あと、アニはキレイ系だけどちびキャラというのがちょっとツボにはまっています。キレイに描いてあげよう、と思っています。
─ 最後に第4巻以降のみどころを教えてください。
門脇 注目していただきたいのは、細かな伏線の張り方ですね。特に原作コミックを読んで内容を知っている人には、かなり楽しめると思います。ちょっとネタに走るというか、本編と関係ないサブ的な見方をすると、登場するキャラクターたちのツーブロック率の高さ。なんでこんなに刈り上げているんだろう、というくらい、ものすごく多いです。壁の中で流行っているのかな、と思います。
メインキャラでもエルヴィン、リヴァイ、ジャン、#14のウォール教の教徒や憲兵団にもたくさんいるので、ぜひチェックしてほしいですね。
あと、気になるところでは回想シーンでことごとく不良に絡まれているアルミン。しかも絡んでくる人たちが全員違うんです。何かあったんでしょうか(笑)。
まじめな話に戻すと、Blu-rayやDVDのパッケージソフト用に、再撮(撮影のやり直し)や仕上げのやり直しなど修正箇所を含めだいたい各話100カット前後を修正しています。
本編の制作と同時進行で行っているので、どうしてもできる範囲内にはなってしまいますが、テレビ放映時とは変わっているところが結構あるので、パッケージを購入されるお客様には、ぜひそこを楽しんでいただければな、と思います。
*1 キャラ表
キャラクター設定のこと。各キャラクターの正面や側面、表情などが描かれている。
*2 作画時七つの掟
#03までのラッシュを観た荒木監督が気になったところを中心にまとめた注意事項。